ふと鏡に映る自分の姿や、一日の終わりに感じる身体の重さに、時の流れを実感することはありませんか。仕事では依然として高いパフォーマンスが求められ、プライベートでも充実を目指したい。しかし、数年前とは違う身体の変化に対して、漠然とした焦りや不安を抱くこともあるでしょう。それは、多忙な日々を送る多くの男性に共通する課題かもしれません。
世の中には「アンチエイジング」に関する情報があふれています。しかし、だからこそ「結局、何から始めればよいのか」と迷ってしまう方も多いはず。
この記事では、老化という生命現象を科学的に、そして根本的に理解し、日々の暮らしの中に戦略的に「若々しさ」を取り入れていくための、いわば“攻めの健康戦略”をご提案します。
未来の自分への最高の投資として、ご自身の身体という最も大切な資本に向き合う時間を、ここから始めてみませんか。
なぜ今、男性にこそ「攻めの健康戦略」が必要なのか?
私たちはこれまで、健康とは「失ってから取り戻すもの」と捉えがちでした。しかし今、その価値観は大きく変わりつつあります。変化の激しい時代をしなやかに生き抜き、自分らしい人生を長く楽しむためには、ただ不調を防ぐだけでなく、心身の状態をより良く保つ意識が重要になっています。
健康を「守る」だけでなく、「育てていく」という視点が、これからの時代を生きる上で大きな鍵となるのです。
パフォーマンスの維持から向上へ。価値観の変化
かつて「アンチエイジング」という言葉には、見た目の若さを追い求める、どこか少し表面的な響きがあったかもしれません。しかし、現代におけるその本質は全く異なります。それは、自らの心身のコンディションを常に整え、年齢という指標にとらわれずに、自分本来の力を発揮し続けるための知的な営みとも言えます。
重要な会議での冴えた判断力、長時間のプロジェクトをやり遂げる持久力、そしてトラブルに動じない冷静さ──こうした力はすべて、健やかな身体の状態があってこそ支えられるもの。年齢を重ねながらも、経験とともに身体的なパフォーマンスも少しずつ磨いていく。そんな柔軟でしなやかな姿勢が、これからの時代にふさわしい「アンチエイジング」のかたちかもしれません。
見た目だけの問題ではない。身体は最高のビジネス資本
自信に満ちた佇まいや、活力ある振る舞いは、周囲に良い印象を与え、信頼を築いていくうえでの大切な要素となります。一方で、疲れた表情や覇気のない態度は、意図せず自身の状態を映し出してしまうこともあるでしょう。
私たちの身体は、キャリアや人生そのものを支える重要な土台です。金融資産や人間関係と同様に、あるいはそれ以上に、継続的なメンテナンスと意識的な働きかけが求められます。この土台を健やかに保ち、年齢とともに深みを増していけるかどうかは、これからの時代を生きるうえでのひとつの力量とも言えるでしょう。
アンチエイジングとは、そうした視点に立った、日々の積み重ねによる前向きな自己投資のひとつなのです。
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まずは敵を知ることから。老化を加速させる 3 大メカニズム
効果的な戦略は、まず「今の自分を知ること」から始まります。
私たちが「老化」と呼ぶ変化は、避けられない運命というよりも、細胞レベルで起こるいくつかの仕組みによって生じる、ごく自然な現象です。
ここでは、その中でも特に注目されている3つのメカニズムについて見ていきましょう
細胞の寿命を司る回数券「テロメア」の短縮
私たちの身体は、およそ38兆個もの細胞で構成されています。その一つひとつの細胞の中には、私たちの設計図ともいえる遺伝情報が書き込まれた「染色体」が存在しています。そして、この染色体の末端を守っているのが「テロメア」と呼ばれる構造です。
分かりやすいイメージとして、靴紐の先に付いている金属やプラスチックのキャップ(アグレット)を思い浮かべてみてください。キャップが靴紐のほつれを防ぐように、テロメアもまた、細胞が分裂を繰り返す際に遺伝情報が損なわれないように守ってくれているのです。
細胞は日々分裂を繰り返すことで、身体の修復や新陳代謝を支えていますが、この分裂のたびにテロメアは少しずつ短くなっていきます。生活習慣や遺伝的な要因によって、その進み方や現れ方には人それぞれ異なる傾向が見られますが、ある一定の長さまで短くなると、細胞はそれ以上分裂することができなくなります。これが「細胞老化」と呼ばれる状態です。
つまり、テロメアの長さは、細胞があと何回分裂できるかを示す“回数券”のようなもの。この“回数券”の使われ方には個人差があり、最近の研究では、遺伝的な要素だけでなく、日々の生活習慣が大きく影響することが分かってきています。1
たとえば、酸化ストレスや慢性的な炎症、心理的なストレスなどは、テロメアを短くするスピードを早めてしまうことが知られています。つまり、私たちの毎日の選択が、細胞レベルでの老化の進み方にも密接に関わっているのです。
エネルギー生産工場の機能低下「ミトコンドリア」の質の劣化
日々を元気に過ごすためのエネルギー。その源は、実は私たちの体のほぼすべての細胞に存在する「ミトコンドリア」と呼ばれる小さな器官にあります。
ミトコンドリアは、食事から取り込んだ糖や脂肪を「ATP(アデノシン三リン酸)」というエネルギーに変換する、いわば体内の“エネルギー生産工場”のような存在です。
思考や運動、代謝、免疫といった生命活動のすべてが、このATPによって支えられています。しかし、この大切なエネルギー工場も、加齢とともにその働きが少しずつ衰えていきます。
その一因となるのが、ATPを生み出す過程で生じる「活性酸素」という副産物。活性酸素は細胞を酸化させる性質を持っており、ミトコンドリア自身を傷つけてしまうのです。その結果、エネルギーの生産効率が落ち、「以前より疲れやすくなった」「疲れが抜けにくい」といった不調が表れてきます。
しかし、これは裏を返せば、ミトコンドリアの質を高めたり数を増やしたりすることができれば、細胞レベルでのエネルギー産生力を取り戻すことが可能ということです。2実は、後ほど紹介する「ある習慣」が、このミトコンドリアの活性化に大きな効果を発揮します。
体をコゲつかせる「糖化」とサビつかせる「酸化」
糖化(Glycation)とは、体内で余分な糖がタンパク質と結びつき、その構造や機能を変性させてしまう反応です。これは、パンケーキを焼いたときに表面がこんがりと茶色くなる「メイラード反応」と同じ仕組みで、体内で起こる“内なる焦げ付き”といえる現象です。
この反応によって生成されるのが、AGEs(終末糖化産物)と呼ばれる物質です。AGEsは肌のコラーゲンに蓄積するとシワやたるみ、くすみを引き起こし、血管壁に蓄積すれば動脈硬化を進行させ、骨に蓄積すれば骨密度の低下を招くとされています。まさに、身体を内側からじわじわと老化させる要因です。3
一方で、酸化(Oxidation)とは、呼吸などで取り込んだ酸素の一部が「活性酸素」に変化し、細胞やDNAを傷つける反応です。これは、リンゴやアボカドの切り口が空気に触れて茶色くなる、または鉄がサビるのと同じく、身体が「サビつく」現象と表現できます。
紫外線や大気汚染、精神的ストレス、過剰な糖質や脂質の摂取などは、活性酸素の発生を加速させます。もちろん、体内にはSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)などの抗酸化酵素が備わっており、ある程度までは防御できますが、その力も加齢とともに衰えていくことが分かっています。4
つまり、「糖化」と「酸化」は、加齢とともに進行する二大ダメージであり、これらをいかに抑制・コントロールするかが、若々しさや健康を長く保つための鍵となります。
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食事がすべての基本。明日からできるアンチエイジング食の新常識
私たちの身体は、日々口にするもので少しずつ形作られていきます。だからこそ、加齢にともなう変化に向き合ううえで、食事を見直すことは有効な手段のひとつと言えます。しかし、巷で「体に良い」とされるものをやみくもに取り入れるだけでは、かえって効率が悪くなってしまうこともあるかもしれません。
そこで、ここからは、科学的な知見に基づきながら、日々忙しく過ごす方でも無理なく取り入れられる、時間と効果のバランスに優れた食事の工夫について、3つの視点からご紹介していきます。
「何を食べるか」より「いつ食べるか」|時間栄養学が示すインパクト
アンチエイジングの食事法で、最近とくに注目されているのが「何を食べるか」だけでなく、「いつ食べるか」という視点です。これは「時間栄養学」と呼ばれ、食事のタイミングが体に与える影響も、食事内容と同じくらい重要だという考えに基づいています。
私たちの体には、約24時間のサイクルで働く体内時計(サーカディアンリズム)が備わっていて、ホルモンの分泌や代謝の働きは、このリズムにあわせて刻々と変化しています。たとえば日中は、体が活動モードに入っているため消化吸収の力が高まりますが、日が沈んで夜になると回復や修復のモードがメインとなるため、消化機能は落ち着いてきます。5
この体内リズムに逆らって、夜遅くに食事をするとどうなるかというと、使い切れなかった糖は脂肪として溜まりやすくなってしまいます。それだけではなく、細胞のメンテナンス機能である「オートファジー」がうまく働かなくなる恐れも。オートファジーとは、細胞の中で古くなったタンパク質や傷んだミトコンドリアなどを分解・再利用する仕組みで、いわば体の“お掃除システム”です。この働きが活発になるのは、食事をしていない空腹の時間帯。つまり、夜遅くの食事が続くと、体が本来のリズムで自分を整えるチャンスを逃してしまう可能性があるのです。
▶︎食べるタイミングの大切さ|ハーバード大の研究より
実際に、ハーバード大学医学大学院の研究グループが行った興味深い実験があります。実験内容は、過体重の成人16人を対象に、まったく同じ食事内容を2通りのタイミングで摂取してもらうというものでした。一方のグループは、午前9時、午後1時、午後5時という早めの時間帯に食事を終えるスケジュール。もう一方は、すべての食事時間を4時間後ろにずらして、午後1時、午後5時、午後9時に食べるという、やや遅いスケジュールが組まれました。
この比較の結果、遅い時間に食事をとることで空腹感が強まり、日中に消費されるエネルギーが平均して約5%低下する傾向が見られました。さらに、脂肪を分解・燃焼する働きに関わる遺伝子の発現が抑えられ、逆に脂肪を蓄える方向に働く遺伝子の活動が高まることも確認されました。6
つまり、同じものを食べていても、食べるタイミングが遅くなるだけで、体内の代謝プログラムが「脂肪をためこみやすい状態」に傾く可能性があることが示唆されたのです。この研究結果は、夜遅い食事が体内リズムに与える影響を通じて、肥満などの健康リスクを高める可能性を示す、ひとつの科学的な根拠といえるでしょう。
今日からできる戦略
まずは、1日のうちで最低でも 12〜16 時間は食事を控える時間をつくることを目標にしてみてはいかがでしょうか。たとえば、夜8時に夕食を終えた場合は、翌朝8時までは固形物を摂らないようにするだけで、オートファジーが活発に働くための大切な時間を確保できます。この方法は「時間制限食」とも呼ばれており、体重管理に加えて、インスリン感受性の向上や炎症の抑制など、多方面での健康効果が期待されています。また、就寝の3時間前までに夕食を済ませる習慣も、とても効果的とされています。7
成果を最大化する「抗酸化」と「抗糖化」の具体的な食材リスト
体を「サビ」と「コゲ」から守るには、抗酸化物質をしっかり摂ることと、血糖値の急激な上昇を避ける食事を心がけることが大切です。
抗酸化(サビ防止)のための食材
酸化を防ぐには、色の濃い野菜や果物を積極的に摂るのが効果的です。これらに含まれる「ファイトケミカル」は、植物が紫外線や外的ストレスから身を守るために作り出す成分で、私たちの体にも抗酸化作用をもたらすとされています。
ポリフェノール類: ブルーベリー、イチゴ等のベリー類、カカオ分70%以上のチョコレート、緑茶、そば
カロテノイド類: トマト(リコピン)、人参(β-カロテン)、ほうれん草(ルテイン)、鮭(アスタキサンチン)
その他: ニンニク、玉ねぎ(アリシン)、ブロッコリー(スルフォラファン)、ナッツ類(ビタミンE)
抗糖化(コゲ防止)のための食事法
糖化を抑えるためには、血糖値が急激に上がったり下がったりする「乱高下」を避けることがひとつのポイントとなります。
低GI値食品を選ぶ: GI値とは食後の血糖値の上昇度を示す指標。白米より玄米や雑穀米、うどんよりそば、食パンより全粒粉パンを選ぶ。
食べる順番を工夫する:「ベジタブルファースト」を徹底。食事の最初に食物繊維(野菜、きのこ、海藻)を摂ることで、糖の吸収が緩やかになります。
「AGEs」を多く含む食品を避ける: 揚げ物や、長時間高温で加熱した加工食品(ベーコン、ソーセージなど)はAGEsを多く含みます。調理法は「揚げる・焼く」より「蒸す・茹でる」を選ぶのがおすすめです。
多忙な日の味方。コンビニでも可能なメニュー選択術
毎日、自炊で理想的な食生活を完璧に続けるのは、現実的にはなかなか大変です。そんなときは、コンビニを上手に活用するのも一つの手。選び方を少し意識するだけで、手軽に栄養バランスを整えながら、アンチエイジングにもつなげることができます。
主食:「もち麦」や「雑穀」入りのおにぎりを選ぶ。サンドイッチなら「全粒粉パン」のものを。
主菜:「焼き魚(塩焼きがベスト)」「サラダチキン」「ゆで卵」「豆腐」を選ぶ。揚げ物は避ける。
副菜:「野菜サラダ」「ほうれん草のおひたし」「ひじきの煮物」「もずく酢」などを必ず一品加える。ドレッシングはノンオイルを選ぶ。
間食: 素焼きの「ミックスナッツ」、カカオ70%以上の「ハイカカオチョコレート」、「プレーンヨーグルト」を選ぶ。
飲み物:「水」「緑茶」「ブラックコーヒー」を基本とし、加糖飲料や果汁100%ジュースは避ける(果糖は糖化を促進しやすいため)。
この選び方のルールさえ押さえておけば、忙しい日でも大きく戦略から外れることはありません。
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ミトコンドリアを甦らせる運動法
「運動する時間がない」——これは多忙な日々を送る方にとって、共通の悩みかもしれません。
けれども、運動がもたらすアンチエイジング効果は、食事だけでは補いきれないほど大きなものです。
重要なのは、長い時間をかけることではなく、「質」を極限まで高めること。
ここでは、限られた時間でも確かな成果を得るための、2つの戦略的な運動アプローチをご紹介します。
なぜ短時間で効くのか?ミトコンドリアを活性化させる「HIIT」の科学
HIIT(高強度インターバルトレーニング)は、「全力の運動」と「短い休息」を交互に繰り返すトレーニング法。たとえば「20秒間の全力運動+10秒間の休憩を8セット」などが代表的なパターンです。
このトレーニング最大の利点は、時間に対する効果の高さ。わずか数分〜十数分程度のHIITが、30〜45分の有酸素運動と同等、あるいはそれ以上の効果をもたらすことが、さまざまな研究で明らかになっています。
HIITがアンチエイジングに役立つ大きな理由のひとつに、「ミトコンドリア」の働きが挙げられます。ミトコンドリアは細胞内でエネルギーをつくり出す器官であり、いわば体のエネルギー生産工場のような存在です。
高い強度の運動を行うと、体は「より多くのエネルギーが必要だ」と認識します。この刺激が引き金となって、古くなったミトコンドリアを分解し、新しく効率の良いミトコンドリアを生み出す「ミトコンドリア新生」が促されます。例えるなら、老朽化した発電所を、性能の高い新しい発電所に建て替えるようなイメージです。
このプロセスによってエネルギー代謝が活発になり、若々しい体の状態をキープしやすくなります。さらに、成長ホルモンの分泌も促されることで、筋肉量の維持や体脂肪の燃焼にもよい影響が期待できます。
▶︎アメリカの病院で行われたHIITの研究
実際に、アメリカの総合病院メイヨー・クリニックで行われた研究では、18歳から30歳の若年層と65歳から80歳の高齢層に分け、12週間にわたりHIIT(高強度インターバルトレーニング)、筋力トレーニング、あるいはその両方を行う実験が行われました。トレーニングの前後に太ももの筋肉細胞を採取し、どのような変化が生じているかを詳しく分析しています。
その結果、すべての運動において効果が認められましたが、特にHIITを行ったグループでミトコンドリアの機能が著しく改善していることがわかりました。とりわけ高齢層では、エネルギーを生み出すミトコンドリアの能力が69%も向上し、若年層の向上率である49%を大きく上回っていました。8
この研究は、高強度の刺激を与えるHIITが、加齢とともに低下しがちな細胞内のエネルギー生産工場であるミトコンドリアを若返らせるスイッチになることを示しています。老朽化した発電所を最新のものに建て替えるようなアンチエイジング効果が、細胞レベルで実証されたと言えるでしょう。
今日からできる戦略
特別な器具を買ったり、わざわざジムに通う必要はありません。その場でできるジャンピングスクワット、もも上げなどを、20秒間「ちょっときついかも」と感じるくらいの強度で行い、10秒間休みます。まずはこれを4セット(合計2分)から始めてみましょう。週に2〜3回、ほんの数分だけでも時間をつくって続けていくと、体のエネルギーを生み出す力がぐっと高まっていきます。
未来への貯蓄。「貯筋」がもたらす代謝とホルモンへの好影響
筋肉は単に体を動かすための組織というだけではありません。加齢とともに自然に筋肉量は減少しますが、これは見た目の問題にとどまらず、全身の健康に大きな影響を及ぼす重要な課題です。
筋肉は体内で最も多くエネルギーを消費する組織の一つであり、基礎代謝を維持するうえでも欠かせません。また、食事から摂取した糖の主要な貯蔵庫でもあり、筋肉量が十分にあれば血糖値のコントロールもしやすくなります。
さらに近年の研究では、筋肉が「マイオカイン」と呼ばれるさまざまな生理活性物質を分泌する、一種の内分泌器官としての役割を持つことが明らかになってきました。マイオカインには抗炎症作用や抗がん作用、さらには脳機能の改善など、多岐にわたるアンチエイジング効果があることが報告されています。こうした意味でも、筋肉は将来の健康を支える大切な「貯蓄」と言えます。特にお尻や太もも、そして体幹の大きな筋肉を鍛えることは、効率的に筋肉量を増やし、健康を維持するうえで非常に効果的です。
今日からできる戦略
日常生活に筋トレを取り入れる意識を持ってみましょう。例えば、エスカレーターの代わりに階段を使ったり、歯を磨きながらかかとを上下に動かすカーフレイズを行ったりするだけでも効果があります。そして、週に2回はスクワットを正しいフォームで15回×3セット行う習慣をつけてみてください。スクワットは下半身全体を効率的に鍛えられるため、「キング・オブ・エクササイズ」とも呼ばれています。こうした積み重ねが、10年後、20年後のあなたの身体を支える確かな資産となるでしょう。
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見過ごされがちな“思考の若さ”。脳と精神のコンディションを整える
これまで身体面からのアプローチを中心にお話ししてきましたが、アンチエイジング戦略において欠かせない最後の要素が「精神」です。心と体は深く結びついているため、精神面のコンディションを整えずに真の若々しさを保つことは難しいと言えます。
ストレスが「テロメア」を縮める?科学が示す精神と細胞のつながり
慢性的な精神的ストレスが老化の進行を早める強力な要因であることは、多くの科学的研究で明らかになっています。強いストレスを受けると、私たちの体は「コルチゾール」と呼ばれるストレスホルモンを分泌します。コルチゾールは短期間の緊急対応には欠かせませんが、長期間にわたり高いレベルで分泌され続けると、身体にさまざまな悪影響を及ぼします。
具体的には、免疫機能の低下や、記憶をつかさどる脳の「海馬」の萎縮を引き起こすだけでなく、特に重要なのは、細胞の寿命を決めるテロメアを守る酵素「テロメラーゼ」の働きを妨げてしまう点です。これにより、テロメアの短縮が加速されることがわかっています。9つまり、精神的なプレッシャーは単なる心の問題にとどまらず、実際に細胞レベルであなたの健康や寿命に影響を及ぼしている可能性があるのです。
1日5分から始める。デジタル時代の戦略的休息術
ストレスという目に見えない敵に向き合うには、意図的にリラックスできる時間を設けることが大切です。そして、頭の中を空っぽにするような静かなひとときを持つことが、心身の回復につながります。
今日からできる戦略
1日5分のマインドフルネス瞑想を取り入れてみてはいかがでしょうか。やり方はシンプルで、静かな場所に座り目を閉じて、自分の呼吸に意識を向けるだけです。「吸って、吐いて」という呼吸のリズムを感じながら、もし雑念が浮かんできても、それにとらわれず、やさしく手放すような気持ちで再び呼吸に注意を戻していきます。
この瞑想は、情報で溢れた脳を一時的に休ませ、ストレス反応を和らげるためにとても効果的な方法です。一部の研究では、マインドフルネスがストレス軽減や集中力の向上に加え、心理的ストレスを軽減することを通じて、間接的にテロメアを保護する酵素テロメラーゼの活性を高める可能性があると報告されています。10スマートフォンを機内モードにして、1日たった5分、自分の内面と静かに向き合う時間を作ることは、デジタル時代における大切な休息のひとつと言えるでしょう。
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未来の自分への最高の投資
この記事でお伝えした内容は、ただの健康情報の羅列ではありません。老化という生命現象を科学的に理解し、その仕組みに戦略的にアプローチするための、一つのフレームワークとなっています。
敵を知る: 老化の根源は「テロメアの短縮」「ミトコンドリアの劣化」「糖化と酸化」にあると理解する。
食事を制する: 「何を食べるか」の前に「いつ食べるか」を問い、12時間以上の空腹時間を作ることから始める。
運動を投資と捉える: 週に数回の「HIIT」と「貯筋」で、時間対効果を最大化する。
精神を整える: ストレスが細胞を老化させる事実を認識し、1日5分の「戦略的休息」を実践する。
一つひとつは決して難しいことではありませんが、小さな習慣の積み重ねが複利のように作用し、5年後、10年後の身体や人生に大きな違いをもたらすでしょう。
すべてを一度に始める必要はありません。大切なのは、最初の一歩を踏み出すことです。もし何か一つだけ選ぶとしたら、夕食の時間を少し変えてみることから始めてみてはいかがでしょうか。
今夜の夕食をいつもより1時間早く終える、または就寝の3時間前には食べ終えることを目安にしてみてください。そのわずかな変化が、オートファジーを促し、睡眠の質を高め、翌朝のコンディションに良い影響をもたらしてくれるはずです。
アンチエイジングとは、過ぎ去った若さをただ取り戻す行為ではなく、未来の自分をより良くするための前向きで知的な自己投資と言えるでしょう。この記事が、あなたの新たな挑戦に向けた信頼できる道しるべとなれば幸いです。
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