花粉症を根本改善する科学的ロードマップ【防御・腸活・最新治療】

花粉症を根本改善する科学的ロードマップ【防御・腸活・最新治療】

西村 今日子

2025年8月15日 7:1

毎年やってくる辛い季節。薬やマスクで万全に備えても、結局「その場しのぎ」で終わっていませんか?本当の花粉症対策とは、症状を抑えるだけでなく、免疫バランスや食生活といった根本原因にアプローチすることです。この記事では、最新の科学的知見に基づき、体の内側から変える体質改善から最新治療までを網羅。長年の戦いに終止符を打つ、あなただけの戦略的ロードマップを提案します。

 

なぜ、多くの花粉症対策は「その場しのぎ」で終わってしまうのか?

不意に襲うくしゃみ、止まらない鼻水、そして耐え難い目のかゆみ。

一般的には春のスギやヒノキの花粉が原因として知られていますが、人によっては初夏や秋にも、こうした症状が容赦なく現れることがあります。

毎年、ドラッグストアで効果的な薬を選び、高性能のマスクを購入し、空気清浄機を最強モードで使うなど、あらゆる対策を試みているのに、なかなか症状がすっきりと改善しないことはありませんか。

多くの花粉症対策は、いわば「モグラ叩き」のように、現れた症状をそのつど抑える対症療法にとどまっているのが現状です。モグラが顔を出す根本原因、つまり地中の巣穴に直接働きかけなければ、戦いが終わることは難しいのです。

毎年繰り返される症状の裏にある、本当の原因

花粉症は、単なる「花粉」というアレルゲンに対する過剰な反応だけではありません。その背後には、免疫システムのバランスの乱れや、長年の生活習慣が積み重なってできた炎症体質、さらには知らず知らずのうちに蓄積されたストレスなど、さまざまな複雑な要因が絡み合っています。

この記事では、最新の科学的知見をもとに、花粉症との向き合い方を根本から見直すための戦略的なロードマップをご紹介します。

まずは花粉をしっかりとブロックする「防御戦略」。次に、体の内側からアレルギーに負けない体質を作る「体質改善」。そして、必要に応じて最新医療を選択肢に加える「攻めの治療」。これらをバランスよく組み合わせることで、長年の悩みから解放されることを目指しましょう。

守りを固める:最新の科学が解き明かす、花粉を寄せ付けないための防御戦略

根本的な改善を目指すにあたって、まず取り組むべきは、「敵」との接触を断つこと。つまり、花粉が体内に侵入するのを物理的に防ぐことです。これは一見すると当たり前のことのように思えますが、この「防御」の質をどれだけ高められるかが、花粉シーズンの快適さを大きく左右します。ここでは、科学的な根拠に基づき、確実性の高い防御戦略を三つご紹介します。

9割の人が見落とす「マスクの正しい選択と装着法」

マスクは花粉対策の中でも基本的なツールですが、その効果を十分に引き出せている方は、意外と多くはないようです。鍵となるのは、「フィルターの性能」と「顔にどれだけしっかり密着するか」の二点です。

マスクの「フィット感」の重要性は、実際の研究によっても確かめられています。咳で発生する、花粉よりはるかに小さい粒子であるエアゾルを、さまざまなマスクがどれほど遮断できるかを調べた研究があります。結果として、通常の医療用マスクをフィット感をあまり意識せずに装着した場合、約56%の粒子を遮断できたのに対し、同じマスクの上から専用のフレーム(マスクブレース)を用いて顔との隙間をなくすと、遮断効率が95%以上にまで向上することがわかりました。1

この研究は、マスクのフィット感が悪く、正しく装着されていない場合、本来なら遮断できるはずの粒子が隙間から多く侵入し、体内に取り込まれる粒子の量が大幅に増加する可能性を強く示しています。

マスクを選ぶ際には、JIS規格(T9001)の認証を受けた製品に注目するとよいでしょう。この規格は、フィルターの性能だけでなく、顔へのフィット感に関する基準も含まれています。装着する際は、きちんと密着するように、以下のポイントを確認してみてください。

1. ノーズフィッターを鼻の形に合わせ、隙間をなくす。

2. マスクを顎の下までしっかりと伸ばし、顔全体を覆う。

3. 両手でマスク全体を覆い、息を吸ったり吐いたりして、空気の漏れがないか確認する。

このひと手間が、鼻や喉を通る花粉の量を劇的に減らすことにつながります。

帰宅後の数分が勝負を決める、花粉の室内侵入を防ぐ習慣

外出先で衣類や髪に付着した花粉を、いかに室内へ持ち込まないかという点も、防御のうえで欠かせないポイントとなります。とくに、一日の終わりに心と身体を整えるはずの空間が花粉で満たされていては、休息の質に大きな影響が出てしまいます。

玄関先で上着や帽子についた花粉を軽く払い落とすくらいの習慣は、多くの方にとってすでに定着していることかもしれません。ただ、本格的な対策としては、そこからさらに一歩進んだ工夫が必要になります。たとえば、玄関で上着を脱ぎ、そのままクローゼットや、花粉の持ち込みを許容すると決めたエリアへ直行することが望ましいとされています。長時間を過ごすリビングなどには、外気に触れた衣類をできるだけ持ち込まないという「ゾーニング」の意識が大切です。

さらに、帰宅後すぐのシャワーや洗髪も、花粉対策として効果的な方法のひとつです。髪は静電気の影響などで花粉が付着しやすく、とくに頭部は顔との距離が近いため、花粉を吸い込んでしまうリスクも高い部位。普段は夜に入浴する習慣のある方も、花粉が気になる時期だけは、帰宅直後にタイミングを変えてみることで鼻詰まりやくしゃみといった夜間の不快感を軽減しやすくなります。このわずかな行動の変化が、翌日のコンディションにも良い影響を与える可能性があるのです。

睡眠の質が免疫を左右する?寝室から花粉を排除する環境整備術

一日の約3分の1を過ごす寝室は、本来もっとも清潔であるべき場所。もし睡眠中に花粉を吸い込み続けてしまうと、アレルギー反応が長引くだけでなく、睡眠の質そのものが損なわれてしまいます。その結果、慢性的な睡眠不足に陥り、免疫のバランスが崩れて、アレルギー症状がさらに悪化する――そんな悪循環が生まれる可能性もあります。2

寝室の環境整備のポイントは以下の通りです。

空気清浄機の活用

HEPAフィルター付きの空気清浄機は、できるだけ24時間稼働させておくのが理想的です。特に、花粉が舞いやすい就寝前や起床時には、空気清浄機のパワーを少し強めにしておくと、より効果が期待できます。

洗濯物の室内干し

花粉が多く飛ぶ日は、洗濯物を外に干すと、せっかくの衣類に花粉が付着してしまい、室内に持ち込んでしまうことになりかねません。この時期は、室内干しや乾燥機を活用するなど、花粉を家に入れない工夫が大切です。

寝具のケア

シーツや布団カバーは外に干さず、布団乾燥機や掃除機を使って花粉を取り除くのがおすすめです。粘着式のクリーナーで寝具の表面をこまめに掃除するのも、手軽で効果的な方法です。

防御の鍵となるのは、精神論ではなく、科学的な知見と日々の習慣の積み重ねです。どれもささやかな対策かもしれませんが、それらを丁寧に重ねていくことで、花粉という目に見えない相手に対して、確かな備えを築いていくことができます。

【第2章】内側から変える:薬に頼り切らないための「体質改善」という科学

たとえ強固な城壁で花粉の侵入を防いでも、城の内部であるあなた自身の体が戦いに弱い状態では、やがて防衛線は突破されてしまいます。本当の意味での改善とは、体の内側からアレルギー反応が起こりにくい、いわば「寛容な体質」へと整えていくことです。ここでは、そのための科学的なアプローチを3つの柱に分けてご紹介します。

腸内環境がアレルギーを制す?今日から始める「腸活」の新常識

アレルギーなのに、なぜ腸の話?と疑問に感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、近年の研究で、全身の免疫システムの約70〜80%が腸に集中していることが明らかになっています。この「腸管免疫」が、アレルギー体質を改善する上で非常に重要な役割を果たしているのです。

私たちの腸内には、およそ38兆個もの細菌が共存し、生態系(マイクロバイオータ)を形成しています。この腸内細菌のバランスが、免疫細胞がアレルゲンに対して「攻撃」を選ぶのか、それとも「寛容」になるのかを左右します。アレルギーを持つ人は、腸内細菌の多様性が低く、バランスが乱れている傾向があると報告されています。3

では、腸内環境を整えるにはどうしたらよいのでしょうか。その答えが「腸活」にあります。

プロバイオティクスを摂る

善玉菌を豊富に含むヨーグルトや納豆、味噌、キムチといった発酵食品を、日々の食事に意識的に取り入れてみてはいかがでしょうか。なかでも、ビフィズス菌や特定の乳酸菌の一部は、複数の研究でアレルギー症状を和らげる可能性が示されています。4

プレバイオティクスを摂る

善玉菌のエサとなる水溶性食物繊維やオリゴ糖を摂取することも同様に重要です。海藻類、きのこ類、ごぼうなどの根菜類、玉ねぎ、バナナなどに豊富に含まれています。

これは単なる流行の健康法ではなく、免疫システムの司令塔を正常に機能させるための、とてもに理にかなったアプローチです。日々の食事が、来シーズンのあなたの体調を形作ると言えるでしょう。

炎症を抑える食事、促進する食事 - 食材選びのチェックリスト

花粉症にともなうくしゃみや鼻水、目のかゆみといった不快な症状は、体内で起きている「炎症反応」の一つとされています。つまり、毎日の食事次第では、この炎症を鎮める方向へと働きかけることも、逆に炎症を強める選択をしてしまうこともあり得るということです。

忙しい毎日の中で、毎回完璧な食事メニューを用意するのは難しいかもしれません。しかし、以下のチェックリストを参考に食材を選ぶだけでも、体調には着実な変化が期待できます。

積極的に摂りたい「抗炎症」食材

オメガ3系脂肪酸: 炎症を抑制する働きがあります。青魚(サバ、イワシ、サンマ)、亜麻仁油、えごま油、くるみなどに豊富です。

ポリフェノール: 強力な抗酸化作用を持ち、炎症の原因となる活性酸素を除去します。緑茶(特にカテキン)、ベリー類、カカオ含有率の高いチョコレート、色の濃い野菜(ブロッコリー、トマト)などが代表的です。

ビタミンD: 免疫のバランスを調整する重要な役割を担います。鮭、きのこ類、卵黄などに含まれますが、食事だけで十分な量を摂るのは難しいため、適度な日光浴も効果的です。

なるべく避けたい「炎症促進」食材

オメガ6系脂肪酸の過剰摂取: サラダ油やコーン油、スナック菓子や加工食品には多く含まれています。適量であれば体に必要な成分ですが、現代の食生活では過剰になりやすく、炎症促進に関与する可能性があるとされています。

精製された炭水化物と砂糖: 血糖値を急激に上げることで、体内の炎症を引き起こす原因となることがあります。白米よりも玄米を、食パンよりも全粒粉のパンを選ぶといった、日常のちょっとした工夫が効果的です。

トランス脂肪酸: マーガリンやショートニングに含まれる人工的な脂肪であり、炎症を強く促進する要因の一つとして知られています。

食事は単なるエネルギー補給のみならず、身体を作り、その機能に影響を与える化学物質の集合体でもあります。どのようなものを取り入れるか普段から意識することは、体質改善において非常に効果的な方法の一つと言えるでしょう。

ハーバード大学の研究も注目。ストレスと花粉症の意外な関係性

常に高いパフォーマンスが求められる環境で過ごす人にとって、ストレスは避けがたいテーマかもしれません。実は、この心理的なストレスが花粉症の症状を悪化させる強い要因であることが、科学的に明らかになりつつあります。
強いストレスを感じると、私たちの体は「コルチゾール」というホルモンを分泌します。本来、このホルモンには炎症を抑える役割がありますが、慢性的なストレスにさらされ続けると、免疫細胞がコルチゾールに対して反応しづらくなる「コルチゾール抵抗性」という状態になることがあります。その結果、免疫の制御がうまく働かず、アレルギー反応がより強く出てしまうことがあるのです。5

ハーバード大学医学部の研究者も、心理的ストレスが免疫系に与える影響について警鐘を鳴らしています。6  

ストレス管理は、もはや精神論ではありません。アレルギーをコントロールするための、医学的戦略なのです。

・短時間でも良質な睡眠を確保する

・週に1〜2回、息が上がる程度の運動を取り入れる

・5分間の瞑想や深呼吸を、一日のスケジュールに組み込む

多忙な日々を送る人にとって、こうした行動は「時間の無駄」と感じられることもあるかもしれません。しかし実際には、免疫の過剰反応を抑え、結果として日中の集中力や生産性を保つための、とても理にかなった時間の投資と言えるでしょう。

【第3章】攻めの治療を選択する:症状とライフプランに合わせた最適な医療の選び方

防御をしっかりと整え、体質の改善に努めてもなお、日常生活に支障を感じるほどの症状が続く場合には、現代医療の力を頼ることも賢明な判断と言えます。これは決して「負け」ではなく、目標達成のために利用できるあらゆる手段を戦略的に活かす「前向きな選択」といえます。ここでは、状況に応じた最適な医療の選び方についてご紹介します。

初期療法、導入薬、点鼻薬 - 薬の効果を最大化する正しい知識とタイミング

花粉症の薬物療法は、もはや「症状が出てから服用する」だけのものではなくなっています。最大の効果を引き出すためには、「タイミング」が非常に重要です。

初期療法」という考え方をご存じでしょうか。これは、花粉の飛散が本格化する約2〜4週間前、もしくは症状がわずかに現れた段階で抗ヒスタミン薬などの服用を始める方法です。花粉が大量に飛び、体内で炎症という“火事”が大きくなるのを待ってから消火活動を始めるよりも、小さな火種のうちに抑え込む方が、より少ない力で症状をコントロールできるとされています。7

また、薬の種類もさまざまです。基本的には眠気が出にくい「第2世代抗ヒスタミン薬」が用いられ、鼻詰まりが特に強い場合はロイコトリエン受容体拮抗薬や点鼻ステロイド薬を併用するのが一般的な方法です。点鼻ステロイド薬は全身への影響が少なく、鼻の粘膜の炎症を直接抑えるため非常に効果的です。多くの方が抱くステロイドに対する漠然とした不安も、局所的に使用する場合にはほとんど当てはまらないことがわかっています。

ただ漫然と市販薬を使い続けるのではなく、一度専門医に相談し、あなたの症状のタイプや重症度に応じた処方を受けることが、薬の効果を最大限に引き出し、副作用を抑える近道になります。

「舌下免疫療法」は本当に効果があるのか?メリット・デメリットを徹底解説

症状を抑える対症療法とは異なり、アレルギー反応そのものを起こしにくくすることで、長期的な寛解状態を目指す治療法が「アレルゲン免疫療法」です。中でも、自宅で手軽に続けられる「舌下免疫療法」が近年広く普及しています。

この治療法は、スギ花粉などのアレルギー原因物質のエキスを、ごく少量ずつ毎日舌の下に含むことで、体を徐々に慣らし、アレルゲンに対する過剰な免疫反応を抑えることを目指します。言わば、体をアレルゲンに少しずつ慣れさせるワクチンのようなイメージで理解するとわかりやすいかもしれません。

メリット

この治療法の有用性は、日本人のスギ花粉症患者を対象とした5年間の大規模臨床試験により、次のような点から明らかになっています。

・治療期間を通じて安定した症状の軽減が期待できること

この試験では、舌下免疫療法を継続したグループは、偽薬を服用したグループ(プラセボ群)と比べ、5年間にわたり、花粉によるくしゃみや鼻水、鼻づまりといったアレルギー症状が一貫して軽減され、その効果には統計的にも有意な差が認められました。8   つまり、治療の効果が毎年しっかりと維持され、生活の質が長期間にわたって保たれることが示されています。

・アレルギー薬への依存が軽減されること

花粉症の時期になると、多くの方が日常的に抗ヒスタミン薬や点鼻薬を使うことになりますが、この試験では、症状の軽減だけでなく、「レスキュー薬」と呼ばれる症状緩和のための薬の使用量も有意に減少していました。つまり、必要以上に薬に頼らずとも、一定の症状コントロールが可能になる可能性が示されています。

・治療後も効果が続く“寛解”に近い状態が得られる可能性

この治療法の最大の魅力は、5年間の治療を終えた後も、その効果が持続していた点です。試験では、治療を中止した翌年(6年目)になっても、症状の抑制効果が維持されており、薬を使わなくても日常生活に大きな支障をきたさない状態が続いていました。8

このような結果は、舌下免疫療法が単に症状を一時的に和らげていたのではなく、免疫システムの過剰な反応そのものを穏やかに調整し、アレルギーが起きにくい体質へと導いていた可能性を示しています。

長年にわたり、様々な対策を試みてこられた方にとって、これは対症療法とは一線を画す、状況を打開するための新しい一手となり得るのではないでしょうか。

デメリット

もちろん、多くのメリットが期待できる一方で、治療を始める前に考慮すべき点もいくつか存在します。

・治療期間が長い

効果を確実にするためには、3〜5年という長期間、毎日治療を続ける必要があります。

・すぐに効果は出ない

治療を開始して最初のシーズンから劇的に効くわけではなく、効果を実感するまでに数ヶ月から1年程度かかることがあります。

・副作用のリスク

口腔内の腫れやかゆみ、腹部の不快感などの副作用が見られることがあります。重篤なアナフィラキシーショックは非常にまれですが、完全に否定できるわけではありません。

舌下免疫療法は、一般的には、花粉の飛散が終わった6月頃から治療を始めることが多いです。ご自身の生活計画も踏まえながら、専門医と相談して判断されることが大切です。

最終手段としての手術療法 - 検討すべき人と、その効果

薬物療法や免疫療法でのコントロールが難しい、特に重度の鼻詰まりに悩む方には、手術療法が選択肢となることがあります。代表的な方法としては、鼻の粘膜(下鼻甲介)をレーザーなどで焼灼し、アレルギー反応が起こる範囲を減らす手術があります。この手術によって、鼻詰まりやくしゃみが大きく改善する場合があり、多くは日帰りで受けられ、身体への負担も比較的軽いのが特徴です。

しかし、こうした効果は永続的ではなく、粘膜は数年で再生するため症状が再発する可能性もあります。そのため、手術は辛い症状を一時的にでも和らげ、生活の質を回復するための「リセットボタン」のような役割と考えると良いでしょう。

手術を検討するのは、薬物療法を十分に行ってもなお、鼻詰まりによる睡眠障害や集中力低下が著しい場合に限られます。こうした重要な判断は、専門医とじっくり相談し、メリット・デメリットを十分に理解したうえで行うことが大切です。

【第4章】未来への投資:二度と花粉症で悩まないための、持続可能なセルフケア

花粉を寄せ付けないための対策、体の内側から整える習慣、そして医療の活用法。ここまで、三つの異なる視点からお話を進めてきました。ここからはそのまとめとして、お伝えした知識を今後どのように役立てていくか、明日からの具体的な行動に繋げるための道筋を一緒に確認していきましょう。

自分だけの「花粉症対策ポートフォリオ」を構築する

例えば資産運用では、ひとつの方法にすべてを託すことはしません。性質の異なる複数の選択肢を組み合わせることで、予期せぬリスクを避け、安定した成果を目指します。実は、花粉症との向き合い方にも、この「ポートフォリオ」の考え方が非常に役立つのです。

・コア(中核)となる資産

腸内環境の改善や抗炎症的な食事といった「体質改善」は、あなたの対策ポートフォリオの土台となります。これは、長期的に安定したリターン(=健康)をもたらす、最も重要な投資と言えるでしょう。

・ミドルリスク・ミドルリターン資産

「舌下免疫療法」は、数年単位の投資が必要なアプローチですが、その先には「長期間、症状から解放される」という、何物にも代えがたいリターンが待っている可能性があります。

・短期的なヘッジ(リスク回避)資産

マスクや空気清浄機による「物理的防御」、そして症状が現れた際の「薬物療法」は、突発的なリスクである花粉の大量飛散から身を守るためのリスクヘッジとして役立ちます。

これらの方法は、ただ闇雲に試すのではなく、ご自身のライフスタイルや症状の程度、そして目指す改善のレベルに合わせて、戦略的に組み合わせることが大切です。例えば、「今シーズンはまず物理的防御と薬物療法で乗り切りながら、6月からは舌下免疫療法や食事の見直しといった長期的な取り組みを始める」といった具体的な計画を立てることが、自分に合った効果的なポートフォリオづくりと言えるでしょう。

症状が出ない時期にこそやるべき、たった一つのこと

花粉症シーズンが終わると、多くの方は辛さを忘れて対策をやめがちですが、賢い投資家が市場の落ち着いた時期に次の戦略を練るように、本当に大切なのは症状が出ていない夏から秋にかけての期間です。この時期こそ、次のシーズンに備えた準備を進める絶好のタイミング___それは、「記録をつけること」です。

・今年、どの薬が、どのタイミングで効いたか?

・どんな食事を心がけた週は、調子が良かったか?

・ストレスが溜まった翌日、症状は悪化したか?

・試した対策のうち、効果があったもの、なかったものは何か?

人の記憶はどうしても曖昧になりがちで、翌年の2月になって去年の状況を正確に思い返すのは簡単ではありません。スマートフォンのアプリや手帳などを活用し、客観的な記録を残すことが大切です。この記録こそが、翌年の対策ポートフォリオをより洗練させるための、かけがえのないデータになります。症状のない時期にこうした地道な行動を続けることが、未来の自分を支える最も確かな投資と言えるでしょう。

長年の戦いに、今こそ終止符を

この記事が、長年にわたる闘いの最終章を描くための、ささやかな手助けとなれば幸いです。

花粉症は、決して「天災」ではなく、知識という武器を持って向き合うべき課題です。その課題を乗り越えた先にあるのは、決して大袈裟なことではなく、ただ「本来のあなたらしいパフォーマンスを取り戻す」という、穏やかで当たり前の日常です。

この記事を閉じた後、何か一つでも、ご自身の生活に取り入れてみようと感じていただけたなら、それが未来を変えるための最も力強い一歩です。あなたが悩ましい季節から解放され、心穏やかな日々を過ごされる日が来ることを、願っています。


参考文献

1 Blachere FM, Lemons AR, Coyle JP, Derk RC, Lindsley WG, Beezhold DH, Woodfork K, Duling MG, Boutin B, Boots T, Harris JR, Nurkiewicz T, Noti JD. Face mask fit modifications that improve source control performance. Am J Infect Control. 2022 Mar;50(3):262-269. doi:10.1016/j.ajic.2021.10.041. PMID: 34924208; PMCID: PMC8674119.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34924208/

2 Wang J, Thingholm LB, Skiecevičienė J, Rausch P, Kummen M, Hov JR, Degenhardt F, Heinsen FA, Rühlemann MC, Szymczak S, Holm K, Esko T, Sun H, Pricop-Jeckstadt M, Al-Dury S, Bohov P, Bethune J, Sommer F, Ellinghaus D, Berge RK, Hübenthal M, Koch M, Schwarz K, Rimbach G, Hübbe P, Pan WH, Sheibani-Tezerji R, Häsler R, Rosenstiel P, D'Amato M, Cloppenborg-Schmidt K, Krawczak M, Laudes M, Baines JF, Franke A. Genome-wide association analysis identifies variation in vitamin D receptor and other host factors influencing the gut microbiota. Nat Genet. 2016 Nov;48(11):1396–1406. doi:10.1038/ng.3695. PMID: 22867694

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22867694/

3 Pascal M, Perez-Gordo M, Caballero T, Escribese MM, Lopez Longo MN, Luengo O, Manso L, Matheu V, Seoane E, Zamorano M, Labrador M, Mayorga C. Microbiome and Allergic Diseases. Front Immunol. 2018 Jul 10;9:1584. doi: 10.3389/fimmu.2018.01584. PMID: 30065721; PMCID: PMC6056614.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30065721/

4 Farahmandi K, Mohr AE, McFarland LV. Effects of probiotics on allergic rhinitis: a systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials. Int Forum Allergy Rhinol. 2022 May;12(5):643–54. doi:10.1177/19458924211073550. PMID: 35099301.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35099301/

5 Morey JN, Boggero IA, Scott AB, Segerstrom SC. Current Directions in Stress and Human Immune Function. Curr Opin Psychol. 2015 Jun;5:13-17. doi: 10.1016/j.copsyc.2015.03.007. PMID: 26086030; PMCID: PMC4465119.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26086030/

6 Rudak PT, Choi J, Parkins KM, Summers KL, Jackson DN, Foster PJ, Skaro AI, Leslie K, McAlister VC, Kuchroo VK, Inoue W, Lantz O, Haeryfar SM. Chronic stress physically spares but functionally impairs innate-like invariant T cells. Cell Rep. 2021 Sep 7;36(10):108979. doi: 10.1016/j.celrep.2021.108979. PMID: 33852855; PMCID: PMC8112805.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33852855/

7 Mizuguchi H, Kitamura Y, Kondo Y, Kuroda W, Yoshida H, Miyamoto Y, Hattori M, Fukui H, Takeda N. Preseasonal prophylactic treatment with antihistamines suppresses nasal symptoms and expression of histamine H₁ receptor mRNA in the nasal mucosa of patients with pollinosis. Med Sci Monit. 2011;17(3):CR165-70. doi:10.1358/mf.2010.32.10.1533687.PMID: 21225011.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21225011/

8 Gotoh M, Yonekura S, Imai T, Kaneko S, Horikawa E, Konno A, Okamoto Y, Okubo K. Long-Term Efficacy and Dose-Finding Trial of Japanese Cedar Pollen Sublingual Immunotherapy Tablet. J Allergy Clin Immunol Pract. 2019 Feb;7(2):544-553.e5. doi:10.1016/j.jaip.2018.11.044.PMID: 30537561.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30537561/



記事の監修

西村 今日子

説明がありません。